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[Q&A] パク・チャヌク監督:『親切なクムジャさん』

「ラストに、雪が必要な意味は
見る方それぞれに感じてほしいね」


※このインタビューは『TVブロス』(11/09発売)用にインタビューした全Q&Aです。ネタバレもかなり多く含んでいますので、なるべくなら映画観賞後お読みください。

Park.jpg──シネスコ(シネマスコープ・サイズ)を使っているのはなぜなのですか?

パク・チャヌク 私が最初にシネマスコープを使ったのは『JSA』で、スケールの大きさを見せつけたかったからワイドスクリーンを使ったわけだけど、その後抜け出せなくなったんだ。韓国では普通のサイズがヴィスタヴィジョンなんだけど、あれを見ると、なんだありゃ、TVじゃないか、と思ってしまってね。以来、ずっとシネスコを使っている。それに第一、人間の視野って思った以上に横長に広く見えるらしく、シネスコがもっとも人間の視野に近いといわれている。ぼくの目から見れば、ぼくのはシネスコではなく「スタンダード」で、他の監督が使っているヴィスタヴィジョンやスタンダードは「ナローヴィジョン」と呼びたいぐらいだよ。

──『オールド・ボーイ』でチェ・ミンシクさんが金槌で大格闘する場面はワイドスクリーンの効果がてきめんでした。今回、ワイドスクリーンがご自分でハマったなぁと思われるのはどんなシーンですか?

パク・チャヌク ペク先生(チェ・ミンシク)に子どもを殺された遺族の人たち9人が廊下に横に並んで椅子に座っている場面かな。あれはワイドな画面が効いていたね。

──ソン・ガンホさんやユ・ジテさんなどなど、〈復讐3部作〉でこれまでの主要キャストの大多数がカメオ出演しているのは、ファンにはうれしい限りです。ほんとに意外な役柄を演じたりしていますからね。

パク・チャヌク それはね。関連性のない3部作に連続性をもたせるため、前2作の出演者全員にカメオ出演をお願いしたんだ。ペ・ドゥナさんだけがTVドラマの仕事が急に入ってダメだったが、ほとんどのキャストがノーギャラでこころよく出演してくれたんだよ(笑)。

──まぁ、ぼくの大好きなペ・ドゥナさんだけが……なぜですか?

パク・チャヌク ペ・ドゥナさんには当然出てもらう予定だったんだけど、急にTVのドラマの仕事が入ったんだよ。もともとは『オールド・ボーイ』でユ・ジテさんのお姉さん役をやっているユン・ジンソさんが演じた「あ、親切なクムジャさん」という台詞がある女性がペ・ドゥナさんの役だったんだ。それで(撮影に)来られなかったので、彼女のために、もう一回設定したわけなんだ。それは養子縁組斡旋センターにクムジャが訪ねる場面で、「そういうことはお答えできません」という役だった。それでもペ・ドゥナさんはまたも来られなかったので、それで急遽、囚人役でも出ている女性に代役をお願いしたんだね。髪型とかすっかり変えたので、違う人間に見えるだろうけど、ペ・ドゥナさんに出てもらえなかったのはとても残念だった。『リンダリンダリンダ』はご覧になりましたか? 彼女は輝いていたね。
 
──当然! でも『復讐者に憐れみを』のペ・ドゥナがいいんです。もっこりします(笑)。

パク・チャヌク ははははは(大笑い)。

──話題を戻しましょう(笑)。〈復讐3部作〉はパク監督が韓国の偉大な俳優に捧げていますね。『復讐者に憐れみを』はソン・ガンホさんに、『オールド・ボーイ』はチェ・ミンシクさんに。そして今回はイ・ヨンエさんにです。彼女がいたからこそ、奇想天外な復讐も説得力をもつのですが、彼女の復讐が優雅でしたね。

パク・チャヌク 今回、特別な想いで書いた企画でもあった。というのも、。『JSA』では残念ながら、彼女の演技力を深く掘り下げる余裕がなかったからね。なんとしても自分の中でその「復讐」を遂げようとする想いが強かったんだ。クムジャは内面的にとても複雑な役柄だったが、撮影前に周到に演技プランを用意して、彼女は「もう1回、もう1回」と私を困らせるほどの完璧主義に徹してくれた(笑)。韓国映画界では、男優のイ・ビョンホンさんに匹敵する完璧主義でもある。

 彼女の魅力の一番はやはりそのルックスなわけだが、どんなベテランスタッフに訊いても誰もが、彼女を撮るのは楽しいっていうんだね。イ・ヨンエさんはルックスも完璧だが、美しさをけっして誇示せずに、ひけらかさないのが素晴らしいんだよ。キャラクターに簡単に同化して、演じることができる。今回、彼女はちょっと下品な赤いアイシャドーもしてくれた。また女子高生の制服まで吹き替えなし(!)で挑んでくれた(笑)。頭が下がるよ。

Kumuja19.jpg


──冬だというのに、夏物のワンピースを着て出所するクムジャさんですけど、十変化のようにいろんな洋服を着て、当初ストレートヘアだったのが、やがてウェイビーな髪型、1940~50年代のフィルムノワールの〈ファム・ファタール〉を連想させる髪型になったりしますね。赤いハイヒールや黒いブーツを履いて、カツカツと威勢よく歩く姿にホレボレします。監督は相当な映画狂だとうかがっています。彼女を造型する意味で、何か影響を受けた映画とかありますか?

パク・チャヌク 特にほかの映画で参考にした映画はなかったね。ただ、この映画でクムジャさんが出所して最初に会う刑務所仲間は(ソ・ヨンジュが演じている)美容師という設定だっただろう。たぶん2人は同性愛の関係にあったと思う。クムジャさんはけっして彼女を愛していたわけでなく、(復讐のために)利用していたのだけど、そういうフリをしていただけなんだよ。相手は本気になってクムジャのことを愛している。あの美容室の場面で、刑務所での出来事がカットバックされるけど、美容訓練の場面があって彼女がクムジャの髪の毛を愛撫するショットを紹介的に挿入している。だから、美容室ではおそらく、クムジャは彼女のまごころ(愛)を受けて、ありったけの技術でウェイビーにされ、華麗に変身したんだと思うよ。

──ずばり訊きます。クムジャさんが勤めていたケーキ屋が「ナルセ」というのは、成瀬巳喜男監督からのネーミングですか?

パク・チャヌク もちろん、成瀬巳喜男監督の名前が由来になっている! クムジャが就職するケーキ屋の主人の留学先は最初フランスを考えていたんだ。ところが専門家の方に訊くと、パティシエの世界で、ケーキをああいうふうにデコレーションする技術は、日本が世界一だというんだ。それでインターネットで調べてみると、本当に日本で作られたケーキのほうがきめ細やかなデコレーションがほどこされているんで、じゃあ、日本へ留学したことにしようとなった。それでフランスっぽい名前から、日本風な名前へ変えることになったというわけさ。できるなら映画監督の名前をいただこうと思って考えたときに、「クロサワ」だと黒澤明監督は男性の世界を描く監督なので、ちょっと合わない気がした。また、小津安二郎の「オズ」だと、韓国の人はあまり日本語的な響きを感じないので、私が敬愛していて、女性の世界を描くのが得意で、韓国の人が名前を聞いても日本っぽい「ナルセ」に決めたんだ。

 もうひとつの理由があってね。『オールド・ボーイ』で監禁されていたオ・デスがこの世界に戻って、初めてミドに会う日本料理店の名前をそもそも「アキラ」(*)にしようと思っていたんだけど、看板を変えるお金がなくて、それができなったんだ。だから今回こそは、絶対に日本的な名前をつけようと思っていたんだ。成瀬映画といえば高峰秀子さんだけど、高峰さんは私の理想の女性でね。韓国がイ・ヨンエさんだとすると、高峰さんが一番きれいな女優さんなので、ゆかりがあるその名前を使わせていただいたわけだよ。

*大友克洋の「AKIRA」か、はたまた小林旭の「アキラ」だったのか、訊けずじまいだった。

──高峰秀子さんとは、いつかどこかでお会いできるかもしれませんよ。

パク・チャヌク はははははは(笑い)。

──オープニングで出所のときに、クムジャさんは(韓国の出所祝いの風習である)白い豆腐をひっくり返しますよね。それで、ラストでその豆腐に変わる白いケーキが登場しますね。そのときに、ひっくり返した意味がなんとなくわかったんです。このように巧妙にプロットが配置されていますが、脚本を書くとき、プロットはどうやって考え、配置しようとつとめていますか?

パク・チャヌク あの白い豆腐を(出所したクムジャに)差し出したのはキリスト教の伝道師で、クムジャさんはそれを食べない。つまり、ほかの人間から差し出されたもので許されようとは思っていないわ、という固い決意を表しているというわけなんだ。この映画はよく「宗教的な映画ですね」と言われる。例えば、クムジャの顔に光が差していたり、ポスターにあるように聖母マドンナ的な姿が多いもんだから、そうよく言われんだが、私は考えが違う。宗教的というと、主人公であるクムジャが神のような超越した存在であって、クムジャから審判を受け、許されて、救いを得られるという構造になると思うんだけど、今回はまったく違って、クムジャはもっと利己的で、自分のためだけにすべての行動を起こしているんだよ。贖罪についてもこの程度なら許してもらえるだろう、という彼女の判断基準が行動の正当性を表している。だから復讐を遂げたときに、亡くなったウォンモの幽霊が出てきて、「あなたのことを許します」というような言葉をクムジャは聞きたかったと思うんだよ。クムジャの救いは、宗教的な信仰に頼らず、自分で動いてコトを起こして心の平穏を得ようとして初めて得られるものなんだ。だからまったく宗教とは関係なくて、キリスト教徒でもないし、法華経の教典をみせるけど仏教徒でもない。あえていうなら「クムジャ教」だね。

 それで本題に戻るけど、あの白い豆腐を差し出した人はキリスト教の伝道師で、それをクムジャは食べないんだ。つまりあの冒頭のシーンは、ほかの人間から差し出されたもので許されようとは思わない、というクムジャの固い決意を表している。反対に最後の生クリームの白いケーキは自分の手でまごころを込めて作ったケーキであるわけなんだ。このように、すべてのショットには意味がある。さまざまなディテールを重層的な積み上げた上で訴えていかないと、せっかくはりめぐしたプロット(伏線)も意味をなさないだけに、私の映画にとって脚本はとても重要な要素でもあるんだ。

──ところで、被害者の家族のみんなで食べるあのケーキの中にはペク先生の血が入っているのですか?

パク・チャヌク (きっぱりと)それはまったく違う。けれども、韓国でもペク先生の血をビニールで集めて、真ん中の穴からバケツに注いで集めるシーンがあるんで、「あのケーキは血で作られている」なんて噂が流れていてね。それを聞いて耳を疑ったが、怒るというより大いに反省させられたんだ(笑い)。見た観客がそういうふうに思うってことは、自分がこれまでどんなにグロテスクなシーンを撮ってきたんだろうと思って、反省したんだ。実はこれを見た私の母親まで、「あのケーキはペク先生の血で作ったんでしょう!」と詰問されて、大いに参った(笑)。

──『オールド・ボーイ』のラストシーンも雪の場面でしたが、今回も素敵な雪の風景があります。イ・ヨンエさんの頬に雪の粒が下りてきて、ジュワッと溶けていくさまを見事に映し出しています。また引いた画面でも雪がしっかりと見えているのが素晴らしいですね。実は4,5年前に、撮影監督のジュゼッペ・ロトゥンノさん(現在、イタリア国立映画学校で教鞭をとっている)のローマのアトリエにうかがい、『フェリーニのアマルコルド』での雪の撮影方法についてうかがったわけです。『羅生門』では宮川一夫さんが雨に墨汁を入れましたよね。それで、どんな工夫をしたのか、訊いたわけなんですが、イタリアのチネチッタ撮影所では伝統的に降雪機にシャボンを入れて、あの独特の雪の感じを出すそうなんですね。あの雪のシーンはどうやって撮ったのですか?

パク・チャヌク 面白いご指摘で感謝します。実に興味深い質問だよ。映画史をたどっても、雪のシーンの成功例が本当に少ないからね。『オールド・ボーイ』のエンディングはそういう意味でも挑戦する価値があったと思う。あれは、ニュージーランドで撮られたものだが、現地の特機スタッフ(雨や雪などを降らせるスタッフ)が用意した〈雪〉は紙吹雪みたいで、肌に触れてもなかなか溶けず、風が吹くとゆらゆら揺れたんだよ。『マトリックス』や『ミッション:インポッシブル』も撮影したスタッフであるにもかかわらず、私たちが知っている本物の雪に見えなかったんだ。それで私たちはふるいにかけたりして、小さな雪の粒だけを残して実際の撮影に使ったものだ。だが、彼らは「そんな雪は雪じゃない」と最後まで譲らなかった。われわれも体験したが、ニュージーランドの雪の粒は固いのだからしょうがない。そこで今回はどこまで本当の雪が撮れるか、オーストラリアへ行って「雪の撮影」に再び挑戦したわけなんだ。

 それがこの映画のもっとも重要なシーンだったからね。韓国映画ではあなたがいうように、降雪機に石鹸の泡を混ぜて雪を降らせているよ。それだと、人肌に触れると自然と溶けてしまう。クムジャが救われなければならないラストに、雪が必要な意味は見る方それぞれに感じてほしいね。mousato1212

(10月7日@セルリアンタワーにて)


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原作10年⇒映画15年が、ミソ
この映画を愛せない人間は信じない
狂気の結末。



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君はこのラストシーンが想像できるか?
あまりにも哀しく、あまりにも残酷。
復讐三部作 第一弾!

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『親切なクムジャさん』これぞ女優イ・ヨンエの実力開花!
一体、どこからお話ししたらいいのでしょう。『オールド・ボーイ』も物凄い作品でしたが、同じパク・チャヌク監督の最新自信作だけのことはあります!しかし、ネタバレすることなく面白さをお伝えできるのでしょうか。さて、おそるおそる始めましょ。
『親切なクムジャさん』
● チャングムことイ・ヨンエが復讐の天使に変貌する、パク・チャヌク監督『復讐三部作』の掉尾を飾る一本。● おもしろいか、人に薦められるかと問われると難しい一本だが、駄作ではまったくない。含意や伏線がとても多い映画なので、油断して台詞を聞き逃したりぼーっと

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