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[Q&A] クリント・イーストウッド:『スペース カウボーイ』(2)

Eastwood_Unforgiven現実はフィクションで描かれたものと違う。
そこにアイロニーがある


──『許されざる者』も、より暗い視点ながらプロの意識をもつ、歳をとったプロフェッショナルを描いていますね。『スペース カウボーイ』は同じテーマのポジティブなバージョンととれますね。

クリント・イーストウッド ああ。『許されざる者』では元無法者たちが今は無法者ではなくなっているのだが、金に困って、唯一の解決策は再び暴力的な行為をおこなって報酬の金を得ることだと決心する。もちろんあの映画の目的はそんなことは実際に出来ないと示すことだ。暴力でそんなことはできない。あれは反暴力的な映画なんだよ! 彼らがそれでも暴力的な行為をやろうとするとき……つまり、彼らが悪人ということになっているカウボーイを殺そうとする──そうではないことがわかる、誤解されていただけだとわかる──のだが、うまく出来ない。彼らは過去の西部劇が美化していたような凄腕の無法者ではなく、1発目では相手を殺せない。だからあのシーンには大きな苛立ちがあり、大きな苦悩がある。キッドは目も悪く、無法者になる柄でもないのに、無法者に憧れている。だから、ここには大きなアイロニーがある。現実はフィクションで描かれたものとは違うというアイロニーだ。

──そうしたアイロニカルな視点からか、あなたの映画は悪役が実に魅力的ですね。

クリント・イーストウッド そう思うかい? なら、うれしいね。今ちょうど例に挙げた『許されざる者』では、ジーン・ハックマンが演じた悪役は自分自身に満足している男だ。彼は自分が正しいと思っている。彼の銃規制についての見方は歪んでいるにしても、自分の町をうまく運営はしてきたわけだし、権力を持っている。だが彼は一方で、家を建ててポーチに座ってパイプを吸うことも夢見ていて、そういう引退後の生活の夢がある。これは、アメリカ的な家族のあり方についてのある種の批評でもある(笑)。彼はいいところもある男なのだ。ただ問題なのは、彼が発端で本当に自分を必要としている者に耳を傾けなかったことで、彼は明らかに女性の権利について無頓着だといえるだろうし、正義を実践しようとして……暴力行為を抑えようとする彼の行動が結局はより大きな暴力を産み出してしまう……最後のところでね。だから彼はとても複雑な人物なんだ。これは悪役が単なるむさくるしい野郎であるよりもずっと興味深い。理由もわからず銃をぶっ放すだけの無法者よりもね。

 映画でも、私が受け取る脚本でも、悪役のほうにバックグラウンドの記述があるもの、悪役の行動に何らかの理由づけや正当性があるものはほとんどない。俳優として悪役を演じるときには、それでもバックグラウンドをつくり出さなければいけない。悪役を演じていても自分は正しいのだと感じられる必要がある。自分は正しくて、他の全員が誤っているのだ、と役として信じられなければいけないんだ。だから、ジーン・ハックマンの人物は最後まで自分は正しいと信じている。「私がこんな目に遭ういわれはない。家を建てているのに、なぜこんな結果になるんだ」と言う。彼はなぜこんなことになったのかを理解できないまま死んでいく。

──あなたの映画すべてが、あなたが演じたすべてのキャラクターが、ご自分の自画像であるといえるのではないのですか?

クリント・イーストウッド 私の映画すべて残らずかい? (しばらく考えて)……ああ、質問の意味はわかった。私には何ともいえない。映画を作るときは、常に自分自身をさらけだすことになるが、しかし俳優としては、自分と違うものを演ずることのほうがいつだって面白い。想像する余地があるからね。でも、無意識のうちに自分を表現しているかもしれないし、なぜ自分が無意識のうちに特定の物語に惹かれるのかについての説明にはなる。自分にとって魅力的なものに、やっぱり重点を置いているからね。まあ、そんな話にふけってみるにしても、私にはこの程度しか話せないがね。

『牛泥棒』のつらい終わり方が
私は好きだ


──『牛泥棒』があなたのいちばん好きな映画ですね。なぜなのですか?

クリント・イーストウッド なぜだろうね。私はウィリアム・ウェルマン監督の初期の映画の何本かも好きだし……。『牛泥棒』は集団の暴力、またそれがいかに伝染するものかについての映画だ。死刑はあっても裁判がない状況を描いていている。これはとてもつらい映画で、最後には無実と分かっていてもっとも親しみの持てる人物がみんな縛り首になるんだからね。でもこのつらい終わり方が、私は好きだ。もし最後に誰かが助けに来たら、このメッセージは単に言葉だけのものになってしまう。この終わり方なら、このメッセージやその悲痛さが伝わる。これは短期間で、ほとんどスタジオと、ほんのわずかなロケだけで撮られた映画で、経済的な映画作りでエモーションを伝えることができる見本のような作品だ。一部の演技は今の標準から言えばやりすぎと呼ばれることになるのだろうが、ヘンリー・フォンダの演技だとかは、今でも充分に通用するものだ。

※『牛泥棒』"THE OX-BOW INCIDENT"……『民衆の敵』(1931)で名高いウィリアム・A・ウェルマン監督がヘンリー・フォンダ主演で撮り上げ、アカデミー作品賞ノミネートされた1943年製作の西部劇。2人の放浪者がある町を通りかかったときに、地元農民が殺害され、牛が盗まれたという報せが入る。町民たちは自警団を組織し、犯人捜索を開始。やがて牛を連れていた3人組を捕らえる。西部の無法の町を舞台に集団リンチの問題を硬質な筆致で描き、第2次大戦中の〈赤狩り〉の風潮を暗に告発した異色作。

──『奴らを高く吊せ』は、その『牛泥棒』に対するオマージュを捧げた映画のようでもありますね。

クリント・イーストウッド 『奴らを高く吊るせ』は私が60年代に作った映画で、リンチについての静謐な分析……そう、リンチについてのいくつかの視点を示そうとした作品だ。この映画に関われた喜びのひとつは、『牛泥棒』のようなクラシックではないにしても、何かを試みようとしていた映画だったことだろう。

──イタリアで撮られた〈スパゲッティ(マカロニ)・ウエスタン〉3部作についてですが、あなたの今の作風に活かされていると思われますか?

クリント・イーストウッド そうだね。今でもイタリアで映画を撮らなかったら、今の私はなかっただろうと思っているよ。あれらの脚本には映画で見せているよりもずっと情報が入っていた。セルジオ(・レオーネ)は当時若くて野心的な監督だったし、私も若くて野心的な俳優だったが、それはとても興味深い共同作業だった。彼には彼の考えがあったが、私の考えも尊重してくれた。
 
 セルジオは当時私が一緒に仕事をしてきたなかで、確実にもっとも視覚的な映画監督だった。それまで一緒にやってきた監督の多くとは違って、西部劇についての先入観を一切持っていなかった。たしかに、あの人物をミステリアスにしたい、彼について何者かを知る必要はないというのは私の考えだった。脚本には、彼のバックグラウンド(背景描写)についての言及がたしかにあった。われわれはそれを変えたし、セルジオが編集段階でさらにその方向に押し進めた。プロデューサーたちがラッシュを見たときにはチンプンカンプンで、私のことを「この男は何もやっていない」と思ったようだがね(笑)。セルジオは理解していたし、映画が完成したら誰が見ても何をやっているのかは理解できた。すべてがひとつのアクション・シークエンスに集約していく映画だし……。だが、映画を見慣れていない人がラッシュだけ見たら、分析するのがとても難しい映画だったろうとは思うよ。

ナゾめいた人間のほうが観客を引きつける場合がある

──たしかに、あなたの監督・主演作でも、ミステリアスでバックグラウンドがよく分からない人物を好んでいますね。『マディソン郡の橋』では主人公についての説明をカットしているし、『ペイルライダー』でも主人公はどこからともなく現れてどこへともわからず去っていく。それも、レオーネの影響ではありませんか?

クリント・イーストウッド 影響なのかもしれないが、私にはわからない。『マディソン郡の橋』の原作はとても説明的だった。男の視点から書かれていたし、故郷の町や、ワシントンがあって、彼には犬がいて……それでやっとあの女性フランチェスカ(メリル・ストリープ)にたどりつく。私からみれば──あの主婦、これは彼女の物語だ。脚本家も同じ、彼女の物語だというアプローチをとっていた。彼女がいちばん大きな体験をし、彼女がいちばん傷つきやすくもあるのだから。だから、われわれは彼女の視点にこだわったし、それが正しいと思った。彼があっちこっちを旅したり、彼がどこから来たのか、何を考えているのか、どんな写真を撮っているのかには、私はぜんぜん興味がなかった。彼がどのように彼女の人生に入りこみ、善きにつけ悪しきにつけ、そこにどのような影響を与えたのか、それがわれわれのアプローチだった。

『ペイルライダー』についてはまったくちがった話で、私(の人物)はナゾであり、みんなが絶望的になっているところへやってきて、救った後に去っていく。彼の目的が何なのかもわからないのだけど、あの特定の状況の場合は、そのほうがかえって観客をひきつけられると思ったからね。mousato1212

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