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[Review] ほらの吹き方が加減気味な『ブラザーズ・グリム』***

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 ありえないことや、途方もないことを目の当たりにできる、スクリーン上で見る「ほら話」は楽しい。『バンデッドQ』『未来世紀ブラジル』『バロン』『12モンキーズ』……テリー・ギリアム監督の作品はいつだって、大ぼらをどうやってでっちあげるかが成功の鍵になっていた。それは彼のエネルギーと想像力に負うところ大で、他の監督にはマネできない視覚的な誇張は、破天荒で突拍子もないほど、ファンタジーと諧謔(ユーモア)を見事に融合させてきた。

『フィッシャー・キング』のグランドセントラル駅での幻想的なワルツがその好例だ。ギリアム映画の主人公はしばしば美しい“まぼろし”を見る。ホームレスの主人公ヘンリー(ロビン・ウィリアムス)は、やることなすことが微笑ましく映る女性リディア(アマンダ・プラマー)に恋をし、華麗な円舞を夢想する。また聖杯探しに奔走する。もうひとりの主人公ジャック(ジェフ・ブリッジス)にとって、空想と現実の区別がつかなくなったヘンリーの常軌を逸した行動は狂気の沙汰としか思えない。だが、ヘンリーの狂気はやがてジャックに伝染していく。

 そうした狂気と正気のはざまで、ギリアム映画の人物はやんちゃに、自由奔放に、ハチャメチャな行動をする。

 ジョニー・デップ主演の『ドン・キホーテを殺した男』を未完に終わらせてしまった(その顛末が『ロスト・イン・ラ・マンチャ』に描かれる)監督自身の人生そのものが、どの映画の主人公よりも、波瀾万丈のファンタジーに乗っている気がするのだが、そんなギリアムが7年ぶりに挑んだ新作が『ブラザーズ・グリム』である。「赤ずきん」「白雪姫」「シンデレラ」で有名なグリム童話の世界を彼が選んだのは賢明な選択だった。

 メルヘンの世界──まだ呪文や魔法が信じられていた時代である。舞台となる19世紀初頭、ナポレオン率いるフランス軍占領下のドイツの村々は“魔の森”に囲まれていて、そこにはグロテスクな奇譚が転がっている。作り手がイマジネーションの極限まで視覚的な誇張を詰め込める最高の題材だ!

 社交的で現実主義者の兄ウィル(マット・デイモン)と、架空の物語が大好きなロマンティストの弟ジェイコブ(ヒース・レジャー)の、グリム兄弟──実在のグリム兄弟はヤコブが兄、ウィルヘルムが弟だが──は、ヨーロッパを転々としながら、のちに「グリム童話」になる各地の昔話を収集している。時に魔女退治など奇っ怪な事件の解決も買って出るが、それが二人の仕掛けた狂言的なお芝居というのが面白い。そう、彼らはペテン師なのだ。

 詐欺師、または民話に登場するいたずら好きのことを「トリックスター」というが、そうしたシチュエーションに兄弟を落とし込んだアイディアはうまい。兄役のマット・デイモンは『ボーン・アイデンティティ』の寡黙でストイックなスパイとは逆に、雄弁家で好色家。弟役のヒース・レジャーは『Rock You!』の勇敢なナイトとは逆に、いくじがなく男根的な突破力がない。

 こんなおよそヒーローには感じられない兄弟を「冒険家」に仕立て上げてしまうのが、ピーター・ストーメア演じるカヴァルディの存在なのだ。このフランス軍に仕えるイタリア軍人は、「拷問を芸術の域にまで高めた」と豪語する拷問のプロフェッショナル。強烈なイタリア語なまりの英語でまくしたて、かつらを飛ばしては笑わせるコミックリリーフ的存在だ(ジョン・タトゥーロの域にまで達した怪演だ!)。グリム兄弟のペテンをあばこうとするこのイカレた男によって、二人はペテンが通じない本物の魔女にイヤイヤながら立ち向かうはめになる。鏡の女王(モニカ・ベルッチ)が棲むマルバデンの「魔の森」で起こっている少女連続失踪事件の謎解きを命じられるのだ。

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 少女が突如のっぺらぼうになったり、エグいコケオドシ的な見せ場もある。また赤ずきんやグレーテルが森の中に消えていく場面の神秘的な光が美しい。フランス軍が「魔の森」を焼き払う場面で、のどかなロッシーニ作曲「どろぼうかささぎ」序曲(『時計じかけのオレンジ』での使い方も秀逸だった)を対位法的に使ったりと、ギリアム監督は稀代のトリックスターらしい片鱗を見せつける。

 ところが、めくるめくスリルライドになるはずの後半、物語が森の中に入った途端、ニュートン・トーマス・シーゲル(『Xーメン』)のカメラは輝きを失いだし、アーレン・クルーガー(『ザ・リング』)の脚本は発達不全状態になる。魔法で奇っ怪にうごめく『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』のエント族のような森の大木も、気色悪い虫たちも不気味な獣たちも、残念ながらこちらの想定内のイメージでしかない。

 グリム兄弟を現実主義者と夢想家に役割分担させたためか、デイモンもレジャーも、ギリアム映画特有の笑いを爆発させる「狂気」をまったくおびていない。そのため、胸がすくハッピーエンドへの推進力になるはずの2人が、だ。

 とはいえ、さまざまな「魔法」にコントロールされている現代にあって、〈魔法からの覚醒〉というテーマを再構築したギリアムの「毒」は健在だ。大ぼらが小ぼらになったのが本当に本当に口惜しい。mousato1212

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ブラザーズ・グリム "The Brothers Grimm" 
アメリカ/チェコ 2005年 117分
>ホームページ >映画予告編 >MovieTrailers 
>rottentomatoes.com >metactitic.com
評点:★★★(3.0/満点5)
監督:テリー・ギリアム 製作:チャールズ・ローヴェン、ダニエル・ボブカー 脚本:アーレン・クルーガー 撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル 美術:ガイ・ディアス 衣装:ガブリエラ・ペスクッチ、カルロ・ポジオッリ 編集:レスリー・ウォーカー 音楽:ダリオ・マリアネッリ
出演:マット・デイモン(ウィル・グリム)、ヒース・レジャー(ジェイコブ・グリム)、モニカ・ベルッチ(鏡の女王)、ジョナサン・プライス(デラトンベ将軍)、マッケンジー・クルック(ハイドリック)、リチャード・リディングス(ブンスト)、ローラ・グリーンウッド(サッシャ)


[関連記事] ギリアム監督、世界の変人はジョーク連発

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ブラザーズ・グリム
グリム!グリム!ギリアム!ミラクル!ララベル!ヘンテコ、ヘンクツ、ヘナヘナ。マット・デイモンが渋いです。
ブラザーズ・グリム
最近は、試写会あたりの運が向いてきているらしくちょっとうれしい日々が続いております。その第一弾。「ブラザーズ・グリム」に小学生の娘と共に、夜行ってきました。もともと、マット・ディモンみたいなおサル顔が好きだし、ヒース・レッジャーだってわりとそうじゃない?
ブラザーズ・グリム
2005年のワースト候補。グリム兄弟を好きになれないせいで作品の全てが悪く思えてしまいました。ストーリーに盛り上がりはなく構成が悪かったです。寝不足の人は観ない方が良いです。
ブラザーズ・グリム(評価:○)
【監督】テリー・ギリアム【出演】マット・デイモン/ヒース・レジャー/モニカ・ベルッチ/レナ・へディ【公開日】2005/11.3【製
ブラザーズ グリム / Brothers Grimm
伝説の兄弟がすべての謎に立ち向かう!ーというか悪魔退治?? "グリム童話がモチーフとなった、愛と冒険の未知なるファンタジー"ということで,いつものように予備知識なく試写会に参加。毒ある、裏グリムワールド。 最初に言っておくと、ファンタジーと言ってる
賛否両論!「ブラザーズ・グリム」(試写会鑑賞・第2稿)
bobbyshiroの記事内トラックバック第1位見たもの同士で良いも悪いも語りましょう!映画「ブラザーズ・グリム」観られましたか?「赤ずきんちゃん」「シンデレラ」「白雪姫」「眠れる森の美女」「ヘンゼルとグレーテル」と要素を各所に散りばめているのはいいけれど・・・全
ブラザーズ・グリム
ブラザーズ・グリム上映時間 1時間57分 監督 テリー・ギリアム出演 マット・デイモン ヒース・レジャー モニか・ベルッチ ピーター・ストーメア グリム童話誕生秘話。赤ずきん、白雪姫、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテルなど誰もが読んだことがある馴染みの....
ブラザーズ・グリム(試写会) -THE BROTHERS GRIMM-
19世紀のドイツが舞台。兄・ウィル(Matt Damon)と弟・ジェイコブ(Heath Ledger)のグリム兄弟は各地の魔物を退治して名をあげていた。ところがそれはデッチあげの作り芝居。礼金目当てのヤラセだった。しかしある日思いがけない展開から、ある村で起こった連続少女失踪事
ブラザーズ・グリム(映画館)
CAST:マット・デイモン/ヒース・レジャー/モニカ・ベルッチ 他 他■アメリカ/チェコ産 117分ちょっとむか~し『本当は恐ろしいグリム童話』を読んだ時には、あまりにもグロくてエロくてドキマギした記憶が残ってます。でも映画はグリム兄弟が主人公のお話です。彼らは
ブラザーズ・グリム
【映画的カリスマ指数】★★★☆☆子供にはお勧めできないグリムの世界
ブラザーズ・グリム
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ブラザーズ・グリム(2005/アメリカ=チェコ/監督:テリー・ギリアム)
【渋谷TOEI2】 19世紀のドイツ。兄ウィル(マット・ディモン)と弟ジェイコブ(ヒース・レジャー)のグリム兄弟は各地の村を旅して、その地に伝わる古い物語を集め回っていた。その一方で、村人たちを苦しめている恐ろしい魔物がいればそれを退治し、賞金を手にしていた。と
ブラザーズ・グリム
テリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』が大好きで。 なんか、久しぶりにその感覚に再会して嬉しかったよ。 <STORY> ウィル(マット・デイモン)とジェイク(ヒース・レジャー)のグリム兄弟は、魔女退治と称して、“ウソの魔女”を登場させて、退治したフリをしながら、
「ブラザーズ・グリム」@新宿ミラノ座
あの呪われた奇才テリー・ギリアムがこんな商業的娯楽作品を作り、さらにそれがヒットしてしまうことがとても不思議です。The Brothers Grimm [Soundtrack]Dario Marianelli Benjamin Wallfisch Paul Clarvis

コメント

TBありがとうございます★
ラストの、写真。(載せてらっしゃる)

あのモニカベルッチのひび割れた顔、好きです♪(笑
コメントありがとうございます
文章に登場しませんでしたが、モニカ・ベルッチが大好きなんです。ハグしたことも!
いい香りがする女優さんです。

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